大前提として、クラフト社から販売されている菱目打ちとハトメ抜きは、ノーマル状態でも十分使えますし異常なコスパです。
おそらくこれらの工具が発売されたことがレザークラフトの敷居を低くすることになったと思います。
常識的に考えたら某有名手作り菱目打ちのように4本目で7000円くらいするのが当たり前だと思います。
それが1000円ほどで買えて、しかも問題なく使えるのですから素晴らしい品です。
しかし、激安を実現するために手作業での丁寧な仕上げは省かれています。
そこでクラフトノラで気に入らない部分に最終仕上げを施すことで、異常なコスパのまま、更に高品質に使いやすく仕上げました。
菱目打ちを使っていて革に刺した後抜けにくいことがあり、とてもストレスを感じていました。
革を3,4枚重ねると菱目打ちの根元近くまで刺さってしまい、革と菱目打ちの間の摩擦力が強すぎて抜けなくなってしまいます。
特にハンドプレス機で使うと菱目打ちをグリグリ動かせないのでさらに抜けにくくなります。
この原因は目数が多くなることはもちろんですが、刃先の傷にもかなりの原因があることに気が付きました。
手間のかかる磨き上げをしていないので若干の傷と粗めの仕上げとなっており、それが摩擦の原因となってしまいます。
形状を整えつつ、この傷を丁寧な手作業で研磨して鏡面仕上げにすることで、革に刺さった菱目打ちが格段に抜けやすくなります。
また、ノーマルだと刃先は見えないレベルではギザギザなので「ザクッ」という嫌な手応えですが、刃先を滑らかに研ぎ上げているので「スッ」と刃が入ります。
つまり革を押し込んだり引き裂いたりしにくい為、無駄に痛めません。
必要なアイテムと考えている、1.5㎜、2㎜、2.5㎜のそれぞれ1本目と2本目と4本目を用意しています。
6本目は必要ないと考えていますので今のところ無いですが要望あれば用意するかもしれません。
刃の側面はメーカー出荷状態では、研削に使用した砥石の跡が刺さる方向に対して横向きの大きな抵抗になる傷が多く残っているため、これを粒度600番のダイヤモンドヤスリで丁寧に研磨していきます。
刃の形が変わらない範囲で下地を整えたら2000番のヤスリで仕上げます。
完全手作業なのでここが1番面倒臭いし、多分他の業者はマネするとしてもこれをやらずにバフ研磨で済ませてくると思います。
角には圧力が集中しやすく抜けにくくなる原因になりますので、刃ではない部分の不要な角を落とします。
また結果的に先端に行くほど細くなる効果もあるので、刺さった刃を更に抜けやすくしています。
バフ機で3段階の研磨を行うことで鏡面仕上げにしていきます。
1段階目は、赤棒(粒度500くらい)という研磨剤と硬い麻バフで磨くことで、小傷を研磨しながら微細な研磨跡の方向を全て刃の刺さる方向になるように下地を整えていきます。
2段回目は白棒(粒度2000程度)と綿バフで磨きます。
この段階で刃先の横腹の部分、革を切り開くのに必要のない刃を僅かに潰しておきます。
この部分は革を滑らかに押し広げるだけで良く、刃がついている必要がありません。
こうすることで抜けやすくもなりますし、刺さった菱目打ちを抜くときなどに刃先の横腹を触って手を切るリスクも減らせます。
最終仕上げは、青棒(粒度6000番くらい)という研磨剤を使用して磨き上げます。
鏡面仕上げレベルになると革に刺さった時の摩擦抵抗が極めて小さくなります。
輝いている鋼を触って比べてもらえばすぐに違いが解るくらい違います。
この研磨で刃先を表裏からしっかり磨き上げて刃先の鋼の粒子を完全に揃えます。
ミクロの刃こぼれが起こりにくくなるので切れ味も刃持ちも良くなります。
磨き上げたらすぐに刀の錆止めにも使う椿油を付けて保護します。
菱目打ちの材料は炭素鋼ですので錆びやすいです。
使用時もオイル類での手入れを行った方が鏡面を維持できます。
刃先を砥いだり磨いたりするのは、革のトコ面に青棒を付けて表と裏を刃の先端方向に向けて均等に擦るようにしてください。
紙やすりなどを使ってしまうと鏡面でなくなりますし、刃先が荒れてしまいます。
ハトメのページは製作途中です
ハトメ抜きもクラフト社の製品をベースにしています。
元々精度が良くて砥ぎ直しがしやすく、抜いた後の革が外れやすく作られているからです。
このベース性能は変えられないので、他より少し高いですがこれを選びました。
叩いて使うならそのままでもほとんど問題ないですが、ハンドプレス機で使うなら少し物足りないので追加工しました。
ノーマルのハトメ抜きはハンマーで叩いて使用するように作られています。
この叩く力は瞬間的に非常に強い力となるため、刃先を二段研ぎ、つまり刃の先端だけを鈍い角度に研ぐことでダメージを防いでいます。
ハンドプレス機で適切に使用すれば過度な力はかかりませんので、二段研ぎである必要はありません。
刃先を鋭角に砥ぎなおし、さらに鏡面仕上げにすることで、格段に抜けの良いハトメ抜きになります。
ただし、叩いて使用する場合は少し注意が必要になります。
刃先が二段階に砥がれているのがわかるかと思います。
これを旋盤と砥石を使用して正確に落としていきます。
この段階では荒削り後、外側は粒度1000のダイヤモンド砥石を使って下地をつくるところまで行います。
内側は、青棒を使って先に仕上げておきます。
バフ機を使用してまずは白棒で下地を完成させます。
最後は青棒で鏡面研磨です。
ハトメ抜きの場合は刺さって抜けないということはありませんが、刃先を整えて磨き上げれば当然切れ味と刃持ちは向上します。
大きな口径のハトメ抜きほど効果は実感できます。
種類は7号、8号、10号、12号、15号、18号を用意しています。