先に書いた通り、西洋鉋は、販売価格が安いほど、販売時点での精度が悪く、そのままでは使い物にならないことが多々あります。
『よくこれで出荷しやがるな・・・』というレベルもあります。日本メーカーでは有り得ません。
平面がでていない、刃が砥げていない、持ち手のプラスチックのバリが痛い、などなどクレームが来ないのか不思議です。
おそらくは、DIY大国である国では、安いものはそういうものであり自分で調整して使うものであるという認識が広まっているのでしょう。
と、言うわけですので、ここ日本でも調整してお手頃価格の西洋鉋を使いこなしてやりましょう。
現在は、ベンチプレーンはグリズリーの製品を扱っています。
数年前に比べて何故か品質が大幅に向上しており、スタンレーを上回っていると判断しました。
基本的な調整方法は同じですが、個体によってはほとんど台調整しなくても完全に平面が出ているようです。
必ず先に平面のでているところで歪んでいるかチェックしてください。
最近のグリズリーの鉋は比較的綺麗に平面が出ていて、そのままでも問題ない可能性もあります。
写真のものはスタンレーのもので、少し砥いで、両端が白っぽく、真ん中は砥げておらずザラザラしているのがわかるかと思います。
つまり真ん中が凹んでいるわけです。
ただしこのような凹み方の場合は、削る性能には殆ど影響しません。
下のイラストを参考にどこを水平に揃えたいのか確認してください。
比較的、台の口部分が動くことによる刃口調整のない一体成型のものは、狂いはあまりないです。
ローアングル系の台を動かしての刃口調整可能なモデルで安いものは、危険な香りがします。
日本の木製鉋の台ならしを元にしていますが、基本的には同じです。
中しこ鉋というのは平面出し鉋で、先端、刃口、後端を揃えることで、三点を結ぶラインの凸を削り続け、やがて平面に出来ます。
木の鉋の場合は、抵抗軽減の為に他の部分を凹まして接地しないようにしますが、そこまでしなくてもまっ平らで大丈夫です。
逆に言えば、多少の凹みが台にあっても全く問題ありません。
(鋳物の性質上、巣という空気や偏って固まったあとなどの凹みが高確率でどこかにありますが性能には影響ありません)
西洋カンナの台調整は、削る物の最終仕上げにヤスリがけする場合がほとんどなので、中しこ鉋だけで問題ないと思います。
一応、仕上げ鉋の場合も掲載します。
刃口と後端だけ水平をとって、刃口より先端側は必ず設置しない程度に僅かに削ります。
これは、凹凸が僅かにあっても刃が途切れにくく切り込むようになり、削り残しが出にくくなる為です。
ただこれは針葉樹を和鉋で鉋仕上する場合の話であって、現実的には西洋カンナだけでは厳しいので中しこ鉋の均し方をお勧めします。
中しこでももちろん仕上はできますが、かなりの精度で平面がでていないと鉋くずが途切れ途切れになるので、最終仕上げには不向きであるといえるわけです。
西洋カンナは台が硬く、刃幅も狭いので、どうしても僅かな削り筋が出やすいですから特に板状のものを削る場合は、高精度の平面出しをする鉋の性質が強いと思ってください。
精度の良い平面で、かつ逆目の少ない綺麗な削り面でなければ、ヤスリがけをしても無意味なのです。
完全に平面の出ている大きな台、家庭で用意できるものだと、分厚いガラスなどにやすりを張り付けたり金剛砂を使って砥ぎますが、そこまでしなくても市販のダイヤモンド砥石で十分です。
今回は、400/1000番の砥石の400で砥ぎましたが、そこまで滑らかに研ぐ必要はありません。
良かれと思って、鏡のように砥ぎあげると吸盤のように木に吸い付く感じになり摩擦が大きくなるのでむしろ砥がないほうがいいです。
150番で十分です。
ただし、触ってみてトゲのようにあたる感じがする所は、木を傷にしますので完全に均して下さい。
最後に紙ヤスリでなでるといいです。
摩擦軽減の溝が彫ってあるシェラテッドプレーンの場合は、砥がない場合は僅かにバリがあったり、砥いだ場合は溝のフチが鋭くなっているはずなので、溝のフチ全体を軽く布か紙のヤスリで削ってください。
台が長いNo.5などになると、ほとんどのダイヤモンド砥石から大幅にはみ出ます。
そうなると何も考えずに削っても平面になりません。
その場合は、完全に平面が出ている台に裏が粘着テープの紙やすりを台より長く貼り付け、軽く擦ります。
すると、台の出っ張っている部分だけが磨かれて艶が出るので、その部分をダイヤモンド砥石で重点的に削り、ほぼ平面を出します。
わかりにくければ、台が汚れますが1度台をマジックなどで塗りつぶしてからヤスリにかけると一目瞭然となります。
最終的には、全体を平らにするのが目標なのでほぼマジックは消えるはずです。
おそらくは、僅かに歪み(例えば右前と左後は接地しているが左前と右後は浮いているような状態)があるはずです。
それが終わってから全体にダイヤモンド砥石をかけて最終調整した方がいいです。
砥いだあと、ちょっと刃口の上が砥ぎ残っていますが、要は前後端付近と刃口周辺が平らであればいいので十分です。
平面が出ているかどうかは、台に水(か油)をつけて窓ガラスなどの板ガラスにそっと当てて見ましょう。
ほぼ完ぺきであればくっ付く感じがあると思います。
終わったら水気は完全に飛ばしてから錆止めの油を塗ってください。
CRCでもダメではないですが、あれの主成分は灯油みたいなもの(ケロシン)なので、揮発しやすく臭いもあり、木肌にシミを作りやすいです。できれば、
天然オイルを用いた方が良いかと思います。
ブロックプレーンですが、水をつけて鏡に乗せてみました。
あまり薄くすると強度に影響しますので、薄くなりすぎないように気をつけながら削っていきます。
出荷状態の刃です。
ベルトサンダーで、ざっと砥いだ(削った)だけといったところですね。
カエリも取れていません。
海外製品のおおらかな性格が出ています。
これでは、切れるはずもありませんので砥いでいきます。
砥ぐためには、初期投資が必要ですが、そのほかの刃物全てに流用できるので損はありません。
諦めて買いそろえましょう。
治具にセットします。
刃の角度は基本25度で、治具から50ミリ出してセットすると確実に25度になる優れものです。
50㎜のところで段差になっているジグ(クラフトノラでも製作しています)があればより正確ですが、テーブルの端から50ミリの所に印をして刃先を合わせるだけでも問題ありません。
使用している治具はミツトモ製作所のストロングツールです。
鑿研ぎ用で販売されていますが、これは、洋鉋、洋鑿砥ぎツールのそのまんまコピー品です。
日本の鑿や鉋は厚みがあるものが多いので、すこぶる砥ぎにくいですが洋鉋には最適です。
クラフトノラで、製作している刃の研ぎ角設定治具です。
刃こぼれなどなければ中仕上げからスタートです。
ただ、新品1回目の研ぎの時は、異常な角度に研がれている事があり、長々研ぐと砥石を傷めますので、ダイヤモンド砥石で角度を作る事をお勧めします。
日本製のカルタブルーの場合も、出荷状態だと約30度(浅くも深くも調整できるようにです)に角度をつけられていますので、必要に応じてダイヤモンド砥石で角度を作って下さい。
写真のものは、キングの800番ですが、水にしばらく漬けておかないと使えなかったり、減りが速かったりと使いづらい部分があります。
おススメなのは、「シャプトン 刃の黒幕 ♯1000」です。
ものすごく評判がよく、評判通りの文句無しの砥石です。
刃の黒幕シリーズは、水につけるとふやけてダメになってしまうので浸け置き厳禁です。
極限の切れ味を目指すのならば、「裏押し」という作業が必要になります。
ガイドはそのままで仕上げに移ります。
仕上げの前に刃についた中砥石の泥は完全に洗い落としましょう。
諸説ありますが、人工のセラミック砥石では、落とした方がいいと思います。
せっかく仕上げが♯5000なのに♯1000の粒をお持ち込みすることになるからです。
砥石側は、洗わなくても大丈夫です。
写真の砥石はシャプトンの♯5000です。
お金のある人は、1000と5000の間に2000を挟むと砥時間短縮の上に仕上げ砥石のダメージを抑えられます。
表面が砥げたら、そのまま仕上げ砥石に裏面を写真のように2センチほどぴったりと乗せて、真横に動かします。
これは、表を砥いだ時に削れた鉄が刃先から裏面方向へとめくれる様にでてくるカエリを取るためです。
浮き上がらないように、ゆっくりと10回ほどで十分です。
鏡面に仕上がりました。
ここまで砥げば、安い洋鉋でもよく切れるようになります。
ただし、白紙や青紙などの日本の鋼を使用した刃とは残念ながら比較になりません。
これはもう刃の材質の問題ですので正直に書いておきます。
切れ味、長切れ、砥ぎ易さ、を西洋カンナに求める場合、カルタブルーをご検討ください。
木工道具の砥石のページにより詳しい砥ぎ方を掲載していますので、ここでわからない方は、そちらを参考にしてください。
刃の端の段差が出ないように刃の両端を僅かに深く砥ぐのが推奨(当然真っ直ぐが良い場合もありますが)されますが、裏技があります。
砥石を頻繁に直さないことです。
砥石は普通に使っていれば真ん中が早く減ります。
そのまま使えば刃は必ず丸くなります。
ただし、注意点があります。
荒い砥石は、減りが早く、細かい砥石は減りが遅いので、おそらく1000番が早く凹んでしまうはずです。
ある程度は、左右の力の入れ具合で追えるのですが酷くなると、図のようなことになります。
極端に書きましたが、凹み方の差が開くと刃の両端は仕上げ砥石に当たらなくなります。
どれだけ仕上げ砥石で砥いでも鏡面にならなくなるのですぐにわかります。
そうなったら砥石の修正が必要です。
これは左右だけでなく前後でもやはり真ん中が早く減りやすいです。
しかし、砥石を修正するたびに無駄に砥石が削れることになります。
なるべく、そうなるのが遅れるように砥石全体をバランスよく使うのが大切です。
砥ぎしろは、ブロックプレーンの場合3本穴が空いているのの1本目から3本目の間くらい、約2センチ程あります。
例によってバリがあったり精度がよろしくないので、少しだけ整形してあげましょう。
バリがでたら反対から砥いで成形します。
図を描いてみました。
真横から見るとこんな感じになります。
先端の0.5ミリが接するような角度に砥ぎます。
裏座はギリギリまで寄せる必要があります。
刃口全体の広さの調整ではなく、刃を前に寄せる調整になります。
次に、金色のノブの下にあるネジを回します。